#39 1/2『出停記念日』(2024年)

OVERVIEW

弦巻楽団では2017年から折に触れ、レパートリーとして上演している『出停記念日』(作:島元要)を、より磨き上げた形で再演。2021年感染症の影響で中止となった沖縄公演を敢行。「北海道と沖縄の演劇が出会う」をテーマとした交流会も行い、地域の交流を生む2都市ツアーとなった。

作品について

2001年、沖縄のとある高校の教室。

文化祭の打ち上げで飲酒がバレて、44人中40人が停学になった高校2年生のクラス。停学指導が始まった日、グラウンドは指導を受けている40人で大盛況。がらんとした教室に取り残され、窓からグラウンドをただ眺めている4人。にぎやかなグラウンドを眺め、「なぜ私たちは今、教室にいるのか」と思いを巡らせる。

彼女たちは、はたしてこの友情の記念日に参加することができるのか?

登場人物は作品の中で口にします。「いつかいなくなってしまう私たち」。曖昧な不安と微かな希望を宿したこの言葉は現在に通ずる普遍性を持っています。
「いつかいなくなってしまう私たち」が、確かに存在する2024年の、いま、ここ、を劇場で体感してください。

MESSAGE

20年目の衝撃(作者:島元要より)

記録映像を拝見して、台本上は5人しかいない登場人物を、8人の役者でシャッフルする演出の斬新さに唸りました。台詞が役柄を離れて粒立ってくる。詩を感じる瞬間がありました。 今回再見して、無意識を深堀りされたような衝撃があります。初演から20年たって、作者本人が忘れていた大切なことが可視化された衝撃。恐るべき演出力。それを役者スタッフが総力をあげて舞台に豊かに結実させています。是非、劇場にて体感していただきたい。

公演概要

出演

相馬日奈
木村愛香音
柳田裕美
髙野茜
阿部邦彦
(以上、弦巻楽団)

佐久間優香
佐藤寧珠
吉井裕香

日程・会場

札幌
2024年6月21日(金)〜22日(土)
全3ステージ
ターミナルプラザことにパトス

沖縄
2024年6月29日(土)
アトリエ銘苅ベース

スタッフ

脚本:島元要
演出:弦巻啓太

照明:[札幌]秋野良太、[沖縄]手嶋浩二郎
舞台監督:[札幌]秋野良太、[沖縄]上田知
デザイン:むらかみなお
イラスト:みきと
後援:[札幌]札幌市、札幌市教育委員会、[沖縄]北海道
協力:[札幌]札幌演劇シーズン実行委員会
提携:[沖縄]アトリエ銘苅ベース
助成:[沖縄]公益財団法人北海道文化財団
制作:佐久間泉真 ほか
主催:一般社団法人劇団弦巻楽団作・演出:弦巻啓太

舞台写真

メッセージ

こんにちは。この脚本『出停記念日』に出会ったのはちょうど20年前です。当時自分はタレント養成所の講師をしていて、中高生の生徒たちとレッスンで使用できる台本を探していました。図書館や本屋で立ち読みしつつ良い脚本を探している中に、この『出停記念日』はありました。ちょうど高校生のクラスで一つ、女子しかいないクラスがあったので、この作品はうってつけだと思って読み始めました。あらすじの時点で、そして数行読んだところでこの脚本が特別な作品であることが分かりました。

“クラス44人中40人が停学となり、残された4人が教室で自習をする話”

素晴らしい情景に思えました。高校生のかけがえない一瞬を描く、これ以上ないシチュエーションだと思います。

そしてそこから20年経ちました。
私事ですが先日48歳を迎えました。衝撃の数字です。信じられません。38歳以降の10年間が本当に存在したのかとさえ思います。ギリギリ38までは「地続き」な気がするのですが…。高校を卒業して30年になります。

かけがえのない高校生時代。そんな時間自分にあったのかと思います。
高校生の時に見たTVドラマのセリフにこんなものがありました(ドラマの中でも
作家の引用として語られます。)

“人生に大きな事件は三つしかない。生まれる、生きる、死ぬ。生まれることは感
じない。死ぬことは苦しむ。”
“生きてることは——忘れてる。”

毎日がギリギリのようでもあったし、よくない意味で永遠に続くようにも思えた高校時代でした。生来計画性と無縁なせいもあったかもしれません。毎日が、明日が30年続いた先に何が待っているか、何も考えていませんでした。想像もしませんでした。それでもどこかにはたどり着くものです。期待した場所や願った地点と違っても。どこかにはたどり着く。

たどり着くこと自体全く想像できなかった時代。
明日は永遠に今日だと思っていた時代。

48になって良かったことは思いつきません。懐かしいことばかり増えて参ってしまいます。

今日は本当にどうもありがとう。この記念日を一緒に祝いましょう。
ごゆっくりお楽しみ下さい。

弦巻 啓太

札幌公演 当日パンフレットより

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