弦巻楽団は旗揚げ20周年です

2023年、弦巻楽団は旗揚げから20周年を迎えました。これまで37回の本公演を行い、国内だけでなく海外公演も行うことができました。2013年にスタートした演技講座も継続して開講できています。ここまで活発に活動を続けてこられたのは、共に作品を創作した俳優の皆様、スタッフの皆様、そして何よりお客様の多大なる応援のおかげです。心より感謝いたします。

この機会に今一度改めて、弦巻楽団の “これまで” と “これから” についてみなさんに知っていただきたいと思い、「楽団だより20周年特別版」を作りました。内容は、楽団員が分担して書いています。

弦巻楽団を観たことがある人は作品を思い出しながら、観たことがない方は「こんな劇団が20年もやってきたんだな〜」と想像しながらお楽しみいただけると嬉しいです。(佐久間泉真、大川美希)

創作中の忘れられないエピソード

楽団員の島田彩華です。数々の作品に関わってきた古株団員の日奈(相馬日奈)とわんこ(木村愛香音)に、創作中の印象に残っているエピソードを聞いてみました!

日奈 今までの公演で一番思い出して笑っちゃうのはやっぱり、#33『ワンダー☆ランド』(2019)の本番中に舞台上でぶっ転んだわんこさん。

わんこ めちゃくちゃ恥ずかしかった! 見ないで〜!! って思ってた、舞台上で。しかも肘から流血してたし。

日奈 そうそう! 楽屋に帰ってきたわんこさんが怪我してるの見て大笑いした。笑い事じゃないけど。

わんこ #29『ユー・キャント・ハリー・ラブ!』(2018)の舞台裏で、でっかい掃除機を体育座りしてる日奈だと思ってずっと話しかけた遠藤(洋平)さんも面白かったな〜。

日奈 (爆笑)私近くにいたから遠藤さんが掃除機に向かって面白いこと言ってるの見て、静かに笑ってた。

わんこ 旅公演の思い出は?

日奈 #31『センチメンタル』(2018)の時、苫前町の皆さんからとっても美味しいご飯を頂いて。役者の皆が幸せになっちゃって、ゲネプロの出来が「全然センチメンタルじゃなかった」って弦巻さんに指摘されたことあったよね。

わんこ 満たされちゃったよね…(笑)

毎作品何かしらの事件が起きている弦巻楽団。失敗も笑いながら楽しく作品づくりをしています! 次は誰がどんなことをしでかすのでしょうか…!?(舞台上はご安全に!!)

私が入団した理由

弦巻楽団の団員は、それぞれ様々な背景を持って入団しています。阿部邦彦、柳田裕美、そして最近新しく入団した髙野茜、来馬修平に、入団のきっかけを聞きました。

阿部 40歳を過ぎ30代を振り返ると、演劇、写真、風船、まちづくり、アートなどなど色んなことに触れてきたけど、もっと一つ一つにしっかりと向き合えば良かったなぁ…なんて思っていたところ、SCARTSで『ジュリアス・シーザー』の公開制作と舞台を観て、「みんなで作品つくるのいいなぁ。こういう雰囲気なら役者と裏方どっちも楽しめそう」と、パンフレットに折り込まれていた劇団員募集に応募したのです。

柳田 2017年から参加している演技講座で、上手も下手もわからなかった演劇について沢山のことを学び、沢山の人と出逢うことができました。『出停記念日』に出演してさらに演劇が好きになり、一番好きな劇団の、今度は講座生ではなく劇団員の立場から「演じる人(作る人)が何を考えているか」を知りたいと思い、入団しました。

髙野 私が入団したきっかけは高校時代に弦巻楽団の作品に出会えたことです。私は1年生のときに『果実』を観劇し、3年生のときに『神の子供達はみな遊ぶ』を部活の公演で上演しました。そして2022年に演技講座に参加して自分の役者としての弱点を知れたこと、色んな戯曲に触れてもっと演技の勉強がしたいと思ったことから入団しました。

来馬 入団のきっかけはたくさんありますが、一番は縁だと思っています。旭川に住んでいたときにワークショップで弦巻さんを知ってから札幌で演技講座を受け、たくさんの出会いが僕の人生を豊かにしてくれました。そんなたくさんの縁があった場所だから入団したいと思いました。これからも誰かの縁がこの場所で繋がっていけば嬉しいです。

再演したい作品

2021年に入団したイノッチと、2023年に入団した高橋咲希が、再演したい作品について話しました。

イノッチ 高橋さんは弦巻楽団の作品が好きで入団したそうだけど、中でも再演したい作品ってある?

高橋 初めて観た弦巻楽団の作品は『ユー・キャント・ハリー・ラブ!』でした。脚本も購入したくらい大好きな作品です。これまで何度も再演されている人気作ですが、やっぱりまた上演できたらなと思います。もし実現したら号泣してしまうかも…。

イノッチ 『ユー・キャント』のどんなところが好き?

高橋 ラジオが身近だった私にとって、ラジオ越しに恋に落ちるっていうのが最高にロマンチックだなと思って!教授の不器用で可愛らしい姿にキュンとしたり、冬樹里絵さんのギャップに心掴まれたり、個性的で魅力的なキャラクター達も大好きです! ちなみにイノッチさんが再演してほしい作品って?

イノッチ 私の再演したい作品は『死にたいヤツら』ですね。客席からは、2011年と2015年の帯広公演を観ています。そして2021年再演時には武蔵川役で出演もしました。

高橋 『死にたいヤツら』は実はまだ観たことがないんです。これも代表作ですよね! 2021年は劇団員だけでのリメイクで驚いたのを覚えています。新しく劇団員が増えた現在のメンバーでの再演も面白そうです!

これからの10年20年(弦巻啓太)

気がつけば活動を始めて20年が経ったようです。文字にすると味気ないですが、本当にあっという間でした。好きなことをやっていれば、まあなんとかなるだろう。そう思ってずっと演劇に取り組んできました。なんとかなったような、なっていないような、微妙な気持ちです。

「計画」というものが生来苦手です。「意味」とか「効果」という言葉も好きじゃありません。「それをやる意味は?」とか「どういった効果が?」という質問をされたら、「分からないからやるんだよ!」と大声で叫びたいくらいです。だって、「生きる意味」とか「存在理由」とか「自分にしか出来ないこと」とか、無い方が良いと思っているくらいですからね。縛られたく無い。その時、やりたいと思ったことをやりたい。

プロフィールにいまだに「動物占いは粘り強い羊」と書いています。これは20年前知人の紹介で本を読み、のけぞるくらいよく当たっていたのでいまだに記しています。すごく自分の人生を物語っていました。そこには「気分で物事を始めるが、最後までやる」と書かれていました。

途中で投げ出すことができない半生でした。オワコンと言われても。もう流行らないよと言われても。あまり良い経験ばかりではありません。損をすることの方が多かったです。演劇においても。

弦巻楽団は厳しい団体だと思います。何が厳しいのか? 稽古か? 劇団運営か? 楽団員としての規律か? いいえ、違います。リーダーが何一つビジョンを示さない、結果や効果を保証しない活動に参加できるか問われるからです。

ただ、やるべきことだけは見誤ってないつもりです。この札幌で演劇をもっと楽しんでもらうために。豊かな演劇を作る活動と、演劇に触れる人を増やす活動を共存させながら、いかに活動するか。

結果を謳う人はたくさんいました。こうすれば成功する。こうしないと遅れる。そうした意見を参考にする劇団もあったようです。けれどこの20年で何が残ったか、札幌の演劇界にどんな影響があったか、検証する人はいません。その人達も劇団ももういません。僕の目線からは結局経済に乗れなかったから、沈み切る前に去っていたように見えます。別に悪くはありません。賢いんだなと思うだけです。

計画は賢い人が立てれば良いと思います。もちろん弦巻楽団なりの計画はあります。結果のためにやる訳じゃ無いので、助成金や社会の仕組みとは非常に相性が悪い(泣)のですが。

弦巻楽団も20年、演技講座でさえ10年経ちました。結果とは現状でしか無いと思います。弦巻楽団の現状に、少しだけ胸が張れます。

これまで弦巻楽団に関わってくれた全ての方に感謝と愛を。皆さんが存在しなかったら、弦巻楽団は存続してなかったことでしょう。そして何より、客席でいつも舞台を共有してくれる皆さんに。感謝と愛を。

弦巻楽団は続きます。やりたいことも、やるべきこともまだまだあるみたいです。

弦巻楽団#38
セプテンバー

取り残された若者と、取り残された大人たちの “人生の9月” についての物語。