#24『サウンズ・オブ・サイレンシーズ』(2016年)

OVERVIEW

私たちは分かり合っている。 思いやりと気づかいの間で押しつぶされる、現代人のコミュニケーションを題材にした悲喜劇。若手演出家コンクール2014最優秀賞受賞記念公演として、初演は東京で上演した。

作品について

長い闘病生活を送った母を見送った姉妹・つばめとつぐみ。
母の介護を続けてきた姉のつばめは40歳を目前に未だ独身、妹のつぐみは仕事先と家を往復しているだけに見える姉を心配し、恋人・渉の職場の先輩・集とのお見合いを計画する。
つぐみと渉の思惑通りに交際を始めたつばめと集。しかし、集の決意のプロポースをつばめは断ってしまう。
どうしてつばめはプロポーズを断ったのか、理由を探っていく中で、言葉には出せない4人の思いが浮かび上がる。

4人の登場人物が交わす、本音と建前の揺らぎ。
「声にならない言葉」によって追い詰められていく人間たち。
「声にならない言葉」を想像し、慮ることでかえって事態は窮屈になっていく…。

公演概要

出演

温水元
深浦佑太
塩谷舞
深津尚未

日程・会場

東京
2016年3月11日(金)〜13日(日)
全4ステージ
「劇」小劇場

札幌
2016年4月13日(水)〜18日(月)
全4ステージ
扇谷記念スタジオ・シアターZOO

スタッフ

作・演出:弦巻啓太
舞台監督:上田知
舞台美術:川﨑舞
照明:山本雄飛
宣伝美術:本間いずみ(Double Fountain)
制作:小室明子(ラボチ)

舞台写真

メッセージ

1年半ぶりの新作公演となります。今日に先駆けて、先月東京の「劇」小劇場にて、今作『サウンズ・オブ・サイレンシーズ』は本番を迎え、ありがたいことに好評の中4ステージを上演してまいりました。その舞台を改めてこのシアターZO0バージョンで上演します。

1月の 『ユー・キャント・ハリー・ラブ!』は(「札幌演劇シーズン」の力もあって)劇団として初めて1000人を超すお客様に観ていただけました。本当に感謝感謝です。

昨年の 『四月になれば彼女は彼は』で小さくない変化が訪れた弦巻楽団です。ありがたいことに、 『四月に〜』で我々は来月から韓国〜全国を回ってきます。舞台に立つ、演じる、ということ自体に疑問を挟んだこの作品が各地でどんな反応を起こして、それが自分たちにどう影響するか。何を拓き導くのか、楽しみです。ええ、楽しみです。

大きなことを言いたくないと思います。こんな自分でさえ、立場やら環境やらで「明言」を求められることがあります。意味は?効果は?根拠は?ものづくりを共にするメンバーには申し訳なく、同時に深く感謝するのですが、僕は創作にそうした明言をしたくありません。意味があるかは分からない。効果があるかも分からない。

「明言」を求められると、子供な僕(39歳)は、「この人は何と言ったら安心できるんだろう」と考えてしまいます。「自分には責任がない」ということを確認したくて「明言」を求めている。そう感じます。うわべの言葉で良いのは百も承知ですが、子供な僕(再来月40歳)は、頑なにお預けをしてしまいます。そうした 「擬似信頼関係ゲーム」からは離れていたいと思ってます。「縋り甲斐」のない男です。でも、そこで作ったうわべはきっと舞台に乗ってしまうのです。

大きな(それは大概において安易な)言葉を言質として預かり、行動する。現代の息苦しさや、不快感の源泉を辿ると、そうした「責任のがれ」の精神がいたるところに影響してるように思います。3年前の 『トワイライト』という作品に影を落としていたテーマが、今回の『サウンズ・オブ・サイレンシーズ 』にも遠くから、遠くから波紋を投げかけてます。

そんな縋り甲斐のない代表ですが、この春3人の新人が入団いたしました。楽しみです。意味があるかは分からない。効果があるかも分からない。だからこそ、一つやってみよう。

新しいものは必ずしもまっさらに新しいわけではなく、過去の叡智や業績を自分という現在を通して未来に送り出すというものであると、これまでの創作を通じて、多くの失敗を重ねて痛いほど分かってるつもりです。でも、どれだけ分かってること同士を掛け合わせる行為でも、新しい創作に踏み出すときは、そんな精神でいたいと思うのです。

今日は本当にありがとう。ごゆっくり、お楽しみください。

弦巻啓太(当日パンフレットより)