#9『果実』(2009年)

OVERVIEW

2003年にヒステリックエンド時代に上演した作品の再演。昏睡状態の女性の心の声をスライドという形で表現し、それとの会話をからめながら物語は進められる。劇団には少ない、切ない恋物語。

作品について

目隠しをされ、突然ある場所へ連れて来られた男・梳々月(ルルヅキ)。彼を連れてきた柿右衛門と柚は言う。
「…娘と、恋をして下さい」
そこにあるベッドに横たわっていたのは、かつての高校の同級生・杏だった。彼女は17歳の時に事故に合い、それから10年もの間、眠り続けているという。
「初恋を、成就させてやりたいんです。」柿右衛門が作った作品を基に、梳々月は思い出作りを手伝い始めるが、やがてそれも終わりを告げることになる。

深く、静かに胸を打つ、悲しみについての物語。

公演概要

出演

村上義典
下河原由起子
松橋勝巳(劇団ACTOR5)
小野優(LAUGH LAMP)
小林泉
丸山將(Massive 4tsp.)
石川藍
佐藤春陽菜

日程

2009年10月3日(土)〜4日(日)
全4ステージ

会場

生活支援型文化施設コンカリーニョ

スタッフ

作・演出:弦巻啓太
演出部:鈴木健太郎、塚本智沙
舞台監督:尾崎要(アクトコール)
照明:相馬寛之
音響:大江芳樹(Concarino)
小道具:山崎亜莉紗(Massive 4tsp.)
印刷物:石上エリ
制作:弦巻楽団

メッセージ

さてさて、何だかんだと弦巻楽団の約10ヶ月振りの本公演がやって参りました。お会い出来るこの時を、心待ちにしていたのは私どもだけではなく、必ずや皆さんも同じ気持ちだと確信して…その…だったらいいな、と期待している所存です。

え?初めて観劇する…?初めまして。ようこそ!弦巻楽団#9『果実』へ!よくぞいらっしゃいました。何事も第一印象は大事です。襟を正して、ご挨拶させて頂きます。ごゆっくり、お楽しみ下さい。胸が苦しくなっても、新型のアレじゃありません。物語に、あなたの感情が、記憶が、解放されているだけです。だったらいいな…ではなく、確信を持って「そうだ」と申し上げます。#8『子供のように話したい』から10ヶ月、33年の人生の中で最も盛り沢山な日々を送ってきました。劇団を再開して丸三年で、最初に考えていた場所とは随分かけ離れた場所まで来た気がします。

先日、講師として訪れた高校で、自分の半生について語る機会がありました。自分のこれまでを折れ線グラフにして紹介するのです。僕のグラフは、なだらかな右肩下がりを描いていました。生徒さんにこう質問されました。「劇団は順調なのに、なんで下がってるんですか?」僕は答えました。「幸や不幸じゃなくてね…。生きてるとさ…段々悲しくなるんだよ。」高校生は、キョトンと、真っ直ぐな瞳で見つめていました。弦巻楽団は変化し続けます。僕やあなたと同じように。時間という名の天使に喪失を捧げながら。

世間は狼に溢れています。不安心恐怖や絶望ばかりがなり立て、僕達を憂鬱な気分にさせます。迷惑な話です。知ったこっちゃない。そうですよね?僕達がしたかったのは、その胸のセンチメンタルで狼達を退治し、一掃することです。

今日は本当にありがとう。いつも来て下さってる方、本当に感謝です。弦巻楽団は、お客様に恵まれた幸運な劇団だと思ってます。今は、ともに祝福しましょう。とりあえず、ここまでの全てを。失ったものがある、そのことを。解決しない哀しみを、どうかいつまでも手離さないように。ごゆっくり、お楽しみ下さい。

弦巻啓太(当日パンフレットより)