演技講座「舞台に立つ」『ロミオとジュリエット』(2024年)

OVERVIEW

弦巻楽団演技講座の集大成企画「舞台に立つ」が開講10年を迎え、ついに『ロミオとジュリエット』を上演。ゲスト俳優として櫻井保一と田村嘉一を迎え、年齢・職業・演劇経験が多様な総勢18名の出演者で挑んだ。互いに敵対する両家の間に生まれた、二人の若い恋人たち。1つの事件を皮切りに、運命の歯車が狂っていく名作悲劇。

作品について

舞台はイタリアの都市、ヴェローナ。
モンタギュー家の息子・ロミオとキャピュレット家の娘・ジュリエットは、ある晩に舞踏会で出会い一目で恋に落ちる。しかし、両家は長年の深い確執により血で血を洗う争いを繰り返していた。
ロミオから愛の相談を受けたロレンス神父は、二人の恋が両家の不和を終わらせるかもしれないと、手立てを講じるが……。

愛と憎しみ、若さと死。二人の禁じられた恋が迎える結末とは。

公演概要

出演

阿部藍子
荒木柚音
石田暖都
石田琉衣
伊藤優希
高橋友紀子
中村文子
橋本快斗(北海学園大学演劇研究会)
藤田恵未
水戸部佳奈(劇団ひまわり)
宮下諒平(北海学園大学演劇研究会)
宮脇桜桃
吉井裕香

櫻井保一
田村嘉一(演劇公社ライトマン)

髙野茜(弦巻楽団)
高橋咲希(弦巻楽団)
来馬修平(弦巻楽団)

日程

2024年3月23日(土)〜24日(日)
全4ステージ

会場

扇谷記念スタジオ・シアターZOO

スタッフ

脚本:ウィリアム・シェイクスピア
翻訳:松岡和子
演出:弦巻啓太
照明:中森彩
宣伝美術:むらかみなお
制作:佐久間泉真、高橋咲希 ほか
後援:札幌市、札幌市教育委員会
主催:一般社団法人劇団弦巻楽団

舞台写真

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メッセージ

 本日は弦巻楽団演技講座成果発表公演「舞台に立つ」にお越しくださりありがとうございます。

 恒例の「舞台に立つ」も今回で10回目になります(の、筈…)。一回を除き、全てシェイクスピアの作品を上演してきました。

 今回は遂に、つ・い・に、超有名作『ロミオとジュリエット』です。

 悲劇のラブストーリーの原点。
 星めぐりの悪い恋人たちによる、永遠に語り継がれる物語。
 その『ロミオとジュリエット』です。

 これまで「舞台に立つ」で取り組んできたシェイクスピア作品を列記してみましょう。

 『夏の夜の夢』『ヘンリー六世(第二部)』『コリオレイナス』『ハムレット』『ジュリアス・シーザー』『リチャード二世』『ペリクリーズ』『ヴェニスの商人』そして『ロミオとジュリエット』。(『リチャード三世』にも取り組んでいます。)

 なぜこんなチョイスになるか。それはこの舞台があくまで「演技講座」の受講生たちによる舞台だということから、勘の良い人は気がつくかもしれません。適当に選んできた訳じゃありません(えへん)。まあ、ちゃんとした考えなしにわざわざ『ヘンリー六世』を、しかも二部を選ぶ訳がありません。

 初期はとにかく「言葉」で組み立てる演出をしてきました。なので政治ドラマの作品を選んで上演しています。言葉で主張し、言葉で戦う物語。理屈と理屈のせめぎあい。言葉によるシェイクスピア劇の組み立て。そのぶつかり合いから反射的に見えてくる役柄、登場人物。そうした作りでした。ある意味正攻法とも言えます。ですが、回を重ね、経験者も増えてくると次の課題も見えてきます。

 ハッキリと意識して切り替えだしたのは『ペリクリーズ』からです。一言で言えば「言葉」からはみ出してしまうもの、肉体や感情を主軸として舞台づくりをする演出に取り組み出したのです。

 だからこその、『ロミオとジュリエット』です。

 言葉を裏切り、言葉と裏腹な行動ばかりし、計算も策略もないままに突っ走るロミオとジュリエットの向こう見ずな恋。出会い、恋に落ち、結婚し、引き裂かれるまでたった5日間の恋。

 今回お見せするのはそんな刹那的な舞台です。どうか瞬きも惜しんで(!)ご覧ください。

 演技講座がスタートして10年。たくさんの受講生と出会いました。その都度違うメンバーで、違う作品に取り組みます。

 シェイクスピアの作品は取り組むたびに違う顔を見せ、我々に新たな課題を突きつけます。と同時に、いつだって我々自身を炙り出します。それは「いま」という現実を映し出す鏡のようにも思えます。私たちは今どこにいて、何をしようとしているのか。それをいつだって教えてくれます。

 演技講座は2024年度募集が始まってます。戯曲講座に、新設の演出講座も募集がスタートしています。ご応募お待ちしております。

 そして、こうして客席でこれを読んでくださってる皆さん。皆さん一人一人のおかげでこの「演技講座」は存続しています。未熟な点や、疑問を感じる点は遠慮なくアンケートにお書き下さい。その声ひとつひとつに今後も真摯に向き合っていきたいと思います。

 街の片隅でシェイクスピアが上演され、それについて観客が感想を述べ、作り手と議論し語り合う。そんな場を文化と呼ぶのだと思います。芸術と呼んでくれたって構いません。

 そんな場を作り続けることに協力してくださってる皆さんは、まぎれもなくこの街の文化の担い手です。

 今日は本当にどうもありがとう。ごゆっくりお楽しみ下さい。

弦巻啓太(当日パンフレットより)