#39『ピース・ピース』(2024年)

OVERVIEW

弦巻楽団8回目となる札幌演劇シーズン参加作品。“実験的”新作として札幌劇場祭TGR2022で大賞&俳優賞をダブル受賞した作品を、早くも会場コンカリーニョにて全10ステージ再演。

作品について

「母は冷たい女だった。」

舞台には3人の女優。かわるがわるそれぞれが「母」について語り、少し奇妙な、しかしありふれた母と娘の姿が描かれる。

彼女たちの口から語られる「母」の姿は、『冷たい女』、『弱い女』、そして——。

「母」について語り、同時に「母」を演じる3人の女優。母として、時に娘としてそこに現れる彼女たちの姿から、母から娘へ引き継がれる祈り、願い、あるいは呪縛を描きます。

モノローグのような、ダイアローグのような、そこにあるのは不思議な心の安らぎ。

MESSAGE

自分はあと数年で50歳になります。これまでたくさん脚本を書いてきました。これまで鍛えてきた「自分の書き方」から離れ、新たなことにチャレンジしようと思い、急遽生み出されたのがこの『ピース・ピース』でした。近年の「自然な会話劇」に違和感を感じ、ではどんな会話劇が今現在に有効なのかを模索し、『ピース・ピース』はまず戯曲ではなく「小説」として執筆されました。それを解体しながらもう一度演劇にしていったわけです。

なぜわざわざそんなことを?もちろん、観客の皆さんとより深く舞台を共有するためです。観客の心の奥に響くことを願い、語りながら演じ、演じながら語る、モノローグのようなダイアローグのような舞台が生まれました。

観る方ひとりひとりの心の中に、それぞれ違う母の姿が浮かび上がる筈です。

脚本・演出 弦巻啓太

公演概要

出演

赤川楓
佐久間優香
佐藤寧珠

日程・会場

札幌
2024年1月27日(土)〜2月3日(土)
全10ステージ
生活支援型文化施設コンカリーニョ

置戸
2024年3月30日(土)
置戸町中央公民館

スタッフ

作・演出:弦巻啓太

照明:手嶋浩二郎
音響:山口愛由美
舞台美術:藤沢レオ
楽曲提供:橋本啓一
宣伝美術:むらかみなお
制作:佐久間泉真 ほか

主催:札幌演劇シーズン実行委員会
演劇創造都市札幌プロジェクト/北海道演劇財団/コンカリーニョ/BLOCH/札幌市教育文化会館(札幌市芸術文化財団)/北海道立道民活動センター(道民活動振興センター)/北海道文化財団/ノヴェロ/札幌市
協賛:秋山不動産/札幌駅前通まちづくり会社/ノヴェロ/北海道銀行/HTB北海道テレビ/HBC北海道放送
協力:クリエイティブオフィスキュー/シアターキノ/北洋銀行/札幌市図書・情報館
後援:札幌市教育委員会/北海道新聞社/朝日新聞北海道支社/毎日新聞北海道支社/読売新聞北海道支社/日本経済新聞社札幌支社/HBC北海道放送/STV札幌テレビ放送/HTB北海道テレビ/UHB北海道文化放送/TVhテレビ北海道/STVラジオ/AIR-G’エフエム北海道/FMノースウェーブ/FMアップル/三角山放送局/北海道
連携:札幌国際芸術祭実行委員会

舞台写真

メッセージ

 あけましておめでとうございます。2024年、最初の弦巻楽団本公演です。今年は元旦から様々な事件がありました。今も平穏な生活を送れずにいる被災した皆様にお見舞い申し上げます。ここ札幌の小さな劇場で行われる小さなお芝居のこのパンフレットに書いた言葉が、少しでも、この文章を目にした皆様を介して届きますように。

 2023年は3月にシェイクスピア『ヴェニスの商人』、そして9月に新作『セプテンバー』、12月に念願だった『死と乙女』を上演しました。12月は「秋の大文化祭!」という催しを開催し東京から劇団5454さんを招く(祝!札幌劇場祭大賞!)など、怒涛の年末となりました。

 身の回りでも昨年は大きな変化があり、生活パターンが一新されました。考え方は変わってませんが、考える「段階」が一つ増えた感じです。その影響もあって、元旦からの天災はこれまでにない危機感を、危機感という言葉が大袈裟なら不安を与えました。北海道で起きていたら、取り残されるのは自分だっただろう、と。北海道で起きていたら、切り捨てられるのは自分であり、母であり、父であろうと。

 『ピース・ピース』は家族をテーマにしています。素材自体は「母と娘」であり、僕の目から見た「母と娘」という関係の特殊性を取り上げています。友人のようにも見えたり、ライバルのようにも見えたり、憎い仇のようにも見えたり…そんな同性ゆえの(?)一筋縄ではいかない関係を描きました。でも根底にあるのは男性の自分でも通じるものを感じるような家族の姿です。なので、テーマはあくまで家族です。

 高校生の時(1992年)から台本を書いてきて、これまで60作ほど書いてきましたが、「家族」が初めて作品に登場したのは2017年、苫前町に書き下ろした『結婚しようよ』です。「家族」というか「親子」が。それまでも出てはきました。ただ、登場するときは親が、あるいは子が亡くなっていたり、昏睡状態であったり、言わば「機能不全」に陥っている時だけでした。劇作家で25年親子を登場させない人はなかなかいません。そのくらい「家族」「親子」というのは自分にとって特別なもので(とっておきではなく)、消化できない存在でした。

 時が経ち。状況が変わり生活が変われば、内面も変化します。

 つい先日、父にきんぴらごぼうを作り夕食にふるまいました。母からラインで「きんぴらごぼうが食べたいらしい」と連絡が来ていたので、実家に赴き久しぶりに作った訳です。調味料も目分量、油もごま油がなかったのでオリーブオイルで作ったきんぴらごぼうです。薬の影響で食欲のないはずの父は、それを「美味しい、美味しい」と妻の焼いたシャケと共にペロリと平らげました。帰り際、どうもありがとうね、そう父は言いました。いいよ、このくらいいつでも作るよ。

 「家族のことを書けて劇作家は一人前」「家族と仲が悪い奴にいい舞台は作れないよ」と先輩に言われたことがあります。何かにつけて「家族」を描いてる先輩達でした。くそくらえだ。と思ってました。くそくらえ。お前達に何が分かる。

 父にきんぴらごぼうをふるまった夜、高校生の自分と、今の自分の距離を考えました。ずいぶん時間が経った。これは成長なのか。それとも怠惰なだけか。ひょっとしたら、裏切りなのか。家族を許せなかった自分や、決別したかった自分に、50歳を前にした自分が謝罪する姿が浮かびます。申し訳ない。転向に見えるかもしれない。でも、よく分からないんだけど、いつの間にかこうなってしまったんだ。

 今日は本当にどうもありがとう。

 最後の札幌演劇シーズン「冬」です。ささやかな物語ですが、一緒に母や、娘に、あるいは親や子供に思いを馳せてもらえたら嬉しいです。

 ごゆっくり、お楽しみ下さい。

弦巻啓太(当日パンフレットより)

プロモーション動画

SPECIAL CONTENTS

脚本の冒頭公開「母は冷たい女だった。」

本作では、「母」と「娘」を巡る3つの物語が3人の俳優によって演じられます。彼女たちの口から語られる「母」の姿は、『冷たい女』、『弱い女』、そして——。作品の魅力を多くの方に知っていただけるよう、脚本の冒頭を公開!観劇前にぜひお読みいただき、舞台を想像しながらお楽しみください!

初演の感想(2022年11月 札幌劇場祭TGR2022大賞受賞)

作品の魅力を多くの方に知っていただけるよう、2022年初演をご覧いただいた方に、ご感想を提供いただきました!ぜひ観劇のご参考にしてください。

作品の魅力に迫る、2つの特別対談

今回舞台美術として参加される、金属工芸家・彫刻家の藤沢レオさんと作・演出の弦巻啓太によるスペシャル対談! 美術のコンセプトや演劇の原体験について語りました。さらに、前作『セプテンバー』で母娘役を演じた塚本奈緒美さんと相馬日奈による、弦巻作品における「娘の気遣い」についての対談も公開。本作の魅力に迫ります。

「はじめて観劇」&「何度も観劇」キャンペーン実施!

札幌演劇シーズンでの上演を記念し、特別な2つのキャンペーンを実施! はじめて弦巻楽団を観る人や、その方を誘った人、そして何度も弦巻楽団を観ている方に、特別なオリジナルグッズと次回以降の公演割引クーポンをプレゼント!