#42 舞台『砦なき者』(2025年)

OVERVIEW

2002年に発表された小説、およびこれを原作として2004年にテレビ朝日系列で放送され、大きな議論を巻き起こしたテレビドラマを、初舞台化。社会派サスペンスをオール札幌キャストで上演し、TGR札幌劇場祭2025で優秀賞とオーディエンス賞・ホームラン賞を受賞した。「秋の大文化祭!2025」参加作品。

作品について

映像の文化が花開いたその瞬間から、
私たちの視点は誰かの手に落ちていたのかも知れない。

本作は、2002年に発表された小説、およびこれを原作として2004年にテレビ朝日系列で放送され、大きな議論を巻き起こしたテレビドラマです。

報道被害、フェイクニュース、炎上文化といったキーワードが日常化した現代社会では、情報が人を追い詰め、あるいは虚像が人を救うという逆説が浮き彫りになっています。SNSの隆盛により情報伝達が加速した今、作品が描くメディアの光と闇は、より一層鋭く私たちを射抜きます。

スクリーンでもタイムラインでもない、生身の人間が立つ「劇場」に、ぜひ足をお運びください。

STORY

女子高生・古谷めい子が、ビジネスホテルの一室で自殺を遂げた。
少女は前日、首都テレビの人気ニュース番組『ナイン・トゥ・テン』の特集企画の中で、少女売春の元締めとして報じられたばかりだった。

特集を手掛けたメインキャスター・長坂文雄は、激しい非難にさらされ、謹慎処分に追い込まれる。
一方、ライバル局の東洋テレビは、めい子の恋人と名乗る青年・八尋樹一郎に独占インタビューを行なう。

「彼女は無実です。めい子を返して下さい。」

涙を浮かべ、報道によって死に追いやられた恋人の無実を訴えるその姿は、一夜にして彼を「カリスマ青年」へと変貌させた……。

受賞

TGR札幌劇場祭2025 優秀賞・ オーディエンス賞(ホームラン賞)

公演概要

原作 野沢尚

脚本・演出 弦巻啓太

出演

深浦佑太(ディリバレー・ダイバーズ)
戸澤亮

濱道俊介(大人の事情協議会)
遠藤洋平(ヒュー妄)
中禰颯十
岩波岳洋
吉村佳介
三沢さゆり
秋山航也
石田琉衣
橋本快斗

相馬日奈(弦巻楽団)
木村愛香音(弦巻楽団)
阿部邦彦(弦巻楽団)
イノッチ(弦巻楽団)
柳田裕美(弦巻楽団)
髙野茜(弦巻楽団)
古川悠(弦巻楽団)

日程

2025年
11月13日(木) 19:00
11月14日(金) 14:00/19:00
11月15日(土) 14:00/19:00
11月16日(日) 14:00

※全6ステージ。
※開場時間は、各開演時間の30分前。
※上演時間は約120分を予定。
※未就学児の入場不可。

会場

生活支援型文化施設コンカリーニョ

チケット

一般 4,000円
25歳以下 2,500円
高校生以下 1,000円
ペアチケット 6,000円

※税込。全席自由。日時指定。
※当日券は各+500円。ペアチケットは当日券の販売はございません。
※ペアチケットは1枚で2名様が入場できるチケットです。ご利用の際は、2名同時に受付・入場していただく必要があります。別々での入場はできませんのであらかじめご了承ください。

スタッフ

音楽 中條日菜子
舞台美術 高村由紀子
照明 山本雄飛(劇団・木製ボイジャー14号)
音響 山口愛由美
衣裳 相馬日奈(弦巻楽団)
舞台監督 弦巻啓太(弦巻楽団)
宣伝美術 勝山修平(彗星マジック)
制作 佐久間泉真(弦巻楽団)

主催 一般社団法人劇団弦巻楽団
後援 札幌市、札幌市教育委員会
協力 さっぽろアートステージ2025実行委員会、札幌劇場連絡会
助成 芸術文化振興基金

舞台写真

メッセージ

 高校1年生の夏だった。小学生の時からテレビドラマが好きで、姉の影響で『男女七人秋物語』のシナリオ本を暗記するほど読んでいた自分に、姉は新しく始まったドラマのことを話した。とても面白い、今までにないドラマだと。そのドラマはノーマークだったけど、浅野ゆう子と柳葉敏郎が出演で、「W不倫」がテーマだということは知っていた。一見地味な印象だった。ポップな要素が一つもない、かといってことさらえぐみも強くない印象。当時の状況を付記しておけば、90年代初頭のドラマ界は「トレンディドラマ」が猛威を振るっていて、現実離れした設定や、過剰に刺激的な作品が次々に公開され、「W不倫」はインパクトを感じない設定だった。16歳だった自分にはその重さ、切実さは理解できなかった。

 そのドラマ『親愛なる者へ』の第二回は、自分の人生を変えた。特に後半の柳葉敏郎の語りの場面、突如登場する中島みゆき(歌手の中島みゆき、である。もちろん)の素晴らしい存在感も相まって何度もビデオを繰り返し見た。“なんだこのドラマ!” 地味な印象だったそのドラマは、登場人物の存在の深さも、抱えてる業も、交わされる言葉の鋭さも、比類なかった。それが野沢尚氏の、初めての連続ドラマだった。当時、まだ31歳。

 『親愛なる者へ』『素晴らしきかな人生』『この愛に生きて』(最高傑作!)の連続ドラマ3作ですっかりやられてしまった。世間的にはその後、江戸川乱歩賞の受賞、そして『青い鳥』(最高傑作!)、翌年の『眠れる森』(最高傑作!)で認知度は広がったが、自分にとっては何を今更、という感じだった。けして軽くはない。おしゃれに扱えるような作品は一つもない。だけど自分にとって野沢尚作品は、目を背けてはならない人間の愚かさ、身勝手さがギリギリまで描かれた紛れも無い「現実」だった。人間の生きる姿があった。それはこうありたいという人間の願望、でもそうはできない・なれない愚かさ、そしてそれを受け入れる(しかない)弱さ、その末に、ボロボロになって何度も叩きのめされた後に訪れる、恩寵があった。

 ある意味野沢尚作品は人をどこまで追い詰められるか、人間はどこまで耐えられるか、耐えられないのか、それでも人は人でいれるか、そんな実験のようだった。

 人間を信頼するために、人間をボロボロにする。そんな野沢さん自身の苦闘の記録のようだった。

 野沢尚作品を舞台化する。

 そんな暴挙とも言える考えが頭に浮かんだのは数年前だった。これまでの弦巻楽団の取り組みの結果、さまざまな作品を生み出せる環境が(ありがたいことに)出来ていた。『死と乙女』『ファーンズワース・インヴェンション』とここ数年、秋には昔から抱えたままだった自分の「宿題」に向き合ってきた。悲願の、と言ってもいい。

 自分にとって避けられない課題。悲願。野沢尚脚本に取り組みたい。人間を信頼するために、人間をボロボロにする。その挑戦を、今こそ。

 どの作品を上演するか?やってみたい作品はいくつもあった。もちろん戯曲もだが、シナリオとして残された『雀色時』、映画にもなった『深紅』、連続ドラマならやっぱり『親愛なる者へ』。

 でも自分の中ではずっと決まっていた。テレビドラマ版の『砦なき者』。これしかない。メディアの罪と、視聴者の罪。劇中の言葉を借りれば「緊張感のない関係」を糾弾したこの『砦なき者』を、2025年に上演する意味はある。ありすぎるほど、ある。

 今日は本当にありがとう。偶然というか、運命というか、登場人物のニュースキャスター長坂文雄のテレビマン生活と同じく、自分の演劇マン生活は30年になります。(正確には弦巻は来年。まあどこからカウントするかは…うやむや)その想いも今回の上演を後押ししてくれました。そして、上演を快く許可してくださった野沢オフィスの皆様、野澤由紀子様に深く感謝いたします。

 ごゆっくり、お楽しみ下さい。

弦巻 啓太

当日パンフレットより

プロモーション動画