2002年に発表された小説、およびこれを原作として2004年にテレビ朝日系列で放送され、大きな議論を巻き起こしたテレビドラマを、初舞台化。社会派サスペンスをオール札幌キャストで上演し、TGR札幌劇場祭2025で優秀賞とオーディエンス賞・ホームラン賞を受賞した。「秋の大文化祭!2025」参加作品。
映像の文化が花開いたその瞬間から、
私たちの視点は誰かの手に落ちていたのかも知れない。
本作は、2002年に発表された小説、およびこれを原作として2004年にテレビ朝日系列で放送され、大きな議論を巻き起こしたテレビドラマです。
報道被害、フェイクニュース、炎上文化といったキーワードが日常化した現代社会では、情報が人を追い詰め、あるいは虚像が人を救うという逆説が浮き彫りになっています。SNSの隆盛により情報伝達が加速した今、作品が描くメディアの光と闇は、より一層鋭く私たちを射抜きます。
スクリーンでもタイムラインでもない、生身の人間が立つ「劇場」に、ぜひ足をお運びください。
女子高生・古谷めい子が、ビジネスホテルの一室で自殺を遂げた。
少女は前日、首都テレビの人気ニュース番組『ナイン・トゥ・テン』の特集企画の中で、少女売春の元締めとして報じられたばかりだった。
特集を手掛けたメインキャスター・長坂文雄は、激しい非難にさらされ、謹慎処分に追い込まれる。
一方、ライバル局の東洋テレビは、めい子の恋人と名乗る青年・八尋樹一郎に独占インタビューを行なう。
「彼女は無実です。めい子を返して下さい。」
涙を浮かべ、報道によって死に追いやられた恋人の無実を訴えるその姿は、一夜にして彼を「カリスマ青年」へと変貌させた……。
TGR札幌劇場祭2025 優秀賞・ オーディエンス賞(ホームラン賞)
原作 野沢尚
脚本・演出 弦巻啓太
出演
深浦佑太(ディリバレー・ダイバーズ)
戸澤亮
濱道俊介(大人の事情協議会)
遠藤洋平(ヒュー妄)
中禰颯十
岩波岳洋
吉村佳介
三沢さゆり
秋山航也
石田琉衣
橋本快斗
相馬日奈(弦巻楽団)
木村愛香音(弦巻楽団)
阿部邦彦(弦巻楽団)
イノッチ(弦巻楽団)
柳田裕美(弦巻楽団)
髙野茜(弦巻楽団)
古川悠(弦巻楽団)
日程
2025年
11月13日(木) 19:00
11月14日(金) 14:00/19:00
11月15日(土) 14:00/19:00
11月16日(日) 14:00
※全6ステージ。
※開場時間は、各開演時間の30分前。
※上演時間は約120分を予定。
※未就学児の入場不可。
会場
生活支援型文化施設コンカリーニョ
チケット
一般 4,000円
25歳以下 2,500円
高校生以下 1,000円
ペアチケット 6,000円
※税込。全席自由。日時指定。
※当日券は各+500円。ペアチケットは当日券の販売はございません。
※ペアチケットは1枚で2名様が入場できるチケットです。ご利用の際は、2名同時に受付・入場していただく必要があります。別々での入場はできませんのであらかじめご了承ください。
スタッフ
音楽 中條日菜子
舞台美術 高村由紀子
照明 山本雄飛(劇団・木製ボイジャー14号)
音響 山口愛由美
衣裳 相馬日奈(弦巻楽団)
舞台監督 弦巻啓太(弦巻楽団)
宣伝美術 勝山修平(彗星マジック)
制作 佐久間泉真(弦巻楽団)
主催 一般社団法人劇団弦巻楽団
後援 札幌市、札幌市教育委員会
協力 さっぽろアートステージ2025実行委員会、札幌劇場連絡会
助成 芸術文化振興基金






高校1年生の夏だった。小学生の時からテレビドラマが好きで、姉の影響で『男女七人秋物語』のシナリオ本を暗記するほど読んでいた自分に、姉は新しく始まったドラマのことを話した。とても面白い、今までにないドラマだと。そのドラマはノーマークだったけど、浅野ゆう子と柳葉敏郎が出演で、「W不倫」がテーマだということは知っていた。一見地味な印象だった。ポップな要素が一つもない、かといってことさらえぐみも強くない印象。当時の状況を付記しておけば、90年代初頭のドラマ界は「トレンディドラマ」が猛威を振るっていて、現実離れした設定や、過剰に刺激的な作品が次々に公開され、「W不倫」はインパクトを感じない設定だった。16歳だった自分にはその重さ、切実さは理解できなかった。
そのドラマ『親愛なる者へ』の第二回は、自分の人生を変えた。特に後半の柳葉敏郎の語りの場面、突如登場する中島みゆき(歌手の中島みゆき、である。もちろん)の素晴らしい存在感も相まって何度もビデオを繰り返し見た。“なんだこのドラマ!” 地味な印象だったそのドラマは、登場人物の存在の深さも、抱えてる業も、交わされる言葉の鋭さも、比類なかった。それが野沢尚氏の、初めての連続ドラマだった。当時、まだ31歳。
『親愛なる者へ』『素晴らしきかな人生』『この愛に生きて』(最高傑作!)の連続ドラマ3作ですっかりやられてしまった。世間的にはその後、江戸川乱歩賞の受賞、そして『青い鳥』(最高傑作!)、翌年の『眠れる森』(最高傑作!)で認知度は広がったが、自分にとっては何を今更、という感じだった。けして軽くはない。おしゃれに扱えるような作品は一つもない。だけど自分にとって野沢尚作品は、目を背けてはならない人間の愚かさ、身勝手さがギリギリまで描かれた紛れも無い「現実」だった。人間の生きる姿があった。それはこうありたいという人間の願望、でもそうはできない・なれない愚かさ、そしてそれを受け入れる(しかない)弱さ、その末に、ボロボロになって何度も叩きのめされた後に訪れる、恩寵があった。
ある意味野沢尚作品は人をどこまで追い詰められるか、人間はどこまで耐えられるか、耐えられないのか、それでも人は人でいれるか、そんな実験のようだった。
人間を信頼するために、人間をボロボロにする。そんな野沢さん自身の苦闘の記録のようだった。
野沢尚作品を舞台化する。
そんな暴挙とも言える考えが頭に浮かんだのは数年前だった。これまでの弦巻楽団の取り組みの結果、さまざまな作品を生み出せる環境が(ありがたいことに)出来ていた。『死と乙女』『ファーンズワース・インヴェンション』とここ数年、秋には昔から抱えたままだった自分の「宿題」に向き合ってきた。悲願の、と言ってもいい。
自分にとって避けられない課題。悲願。野沢尚脚本に取り組みたい。人間を信頼するために、人間をボロボロにする。その挑戦を、今こそ。
どの作品を上演するか?やってみたい作品はいくつもあった。もちろん戯曲もだが、シナリオとして残された『雀色時』、映画にもなった『深紅』、連続ドラマならやっぱり『親愛なる者へ』。
でも自分の中ではずっと決まっていた。テレビドラマ版の『砦なき者』。これしかない。メディアの罪と、視聴者の罪。劇中の言葉を借りれば「緊張感のない関係」を糾弾したこの『砦なき者』を、2025年に上演する意味はある。ありすぎるほど、ある。
今日は本当にありがとう。偶然というか、運命というか、登場人物のニュースキャスター長坂文雄のテレビマン生活と同じく、自分の演劇マン生活は30年になります。(正確には弦巻は来年。まあどこからカウントするかは…うやむや)その想いも今回の上演を後押ししてくれました。そして、上演を快く許可してくださった野沢オフィスの皆様、野澤由紀子様に深く感謝いたします。
ごゆっくり、お楽しみ下さい。
弦巻 啓太
当日パンフレットより

