#8『子供のように話したい』(2008年)

OVERVIEW

30代半ばの冬、20代半ばの秋、10代後半の春と、年代と季節がシーンにより遡って いくという斬新な構成と、それぞれの季節をうまく表現した舞台美術が話題になる。 いつもの弦巻楽団の作風とは少し違い、どこか懐かしくあたたかな感触の作品となった。

作品について

森のまん中にある霧深い湖、そのほとりにある一軒の小屋。そこへ高校時代の同級生の葬式を終えた仲間が集まってくる。地元へ残っている人、町を出て活躍している人、 結婚していたり独身だったりと、かつて同じ時間を過ごした仲間はそれぞれの道を歩んでいた。始めは楽しい昔話に花を咲かせていたが、次第に雲行きが怪しくなっていく…。

それは、未来がもっとずっと遠くにあり、過去なんてまだ存在して無かったころの物語。

受賞

TGR札幌劇場祭 2008 舞台美術賞

公演概要

出演

知北梨沙
石川藍
佐藤春陽菜
小林花絵(かなぎ堂)
藤谷真由美(苗穂聖ロイヤル歌劇団)
楽太郎
塚本雄介

日程

2008年12月5日(金)〜9日(火)
全8ステージ

会場

扇谷記念スタジオ・シアターZOO

スタッフ

作・演出:弦巻啓太
演出部:山崎亜莉紗、藤原博之
照明:相馬寛之
音響:橋本一生(ISSUE/yhs)
美術:中川有子(WATER 33-39)
衣装:佐々木青
制作:石上エリ

メッセージ

ファンタジィをやろう、と思い立ったのは一年ほど前でした。

で、この一年の間に様々な経験を重ねました。講師として3本の作品を研究生と創造し(シェイクスピア×1、イヨネスコ×1)、演出助手としてTPSさんの公演に参加させてもらい、ワークショップで現代翻訳劇(?!)に取り組み、外部演出を1作上演し深川にも行き、2月に楽団として初の東京公演、夏には教育文化会館小ホール公演。自分で言うのもなんですが、全て本気で取り組みました。全カで。自分で言うのもなんですが、手を抜くと言う事を知りません。生真面目な羊(@動物占い)の性分、と言うよりは、見つかるのが怖くてサボったり出来ないのです。実は。ああ、良い子ちゃんだった子供時代が悔やまれる!

で、当然のように僕も変化し、それはつまり世界の状況の変化な訳ですが、やるべきヴィジョンが少しずつ、視力が変わって視野が二重になるように微妙にずれ、最初にイメージしてた「ファンタジィ」からはだいぶ雰囲気が変わりました。なんせはじめは「森の動物たちが蜂蜜作ったりする話」でしたからね、大きな、アリジゴクがウスバカゲロウになるくらいの変化です。

時々、何もかも間違ってたんじゃないかと思うときがあります。ここまで来るどこかで、何か決定的な間違った選択を自分はしてしまっていて、もう致命的に何かを失っているんじゃないか、と。

僕は双子座の性分として、ひどく懐古的な面と、急進的な面の二面性があります。例えば、中学、高校、大学、昔のバイト先、それぞれその時期は友達や、中には(稀ですが)親友がいました。でも、今も頻繁に連絡を取る相手は一人もいません。嫌いになったわけじゃなくても。懐かしくなっても、寂しくなっても、自分から連絡を取る事はおろか、集まりに顔を出す事さえありません。何ででしょう。

そうするべきじゃなかったんじゃないか。ひどく、そう思えるときがあります。仕方なくなんか無い、自分のミス、取り返しのつかないミスなんだと。

そうして、気が付けば季節は巡り、一つ年齢を重ね、夜はいつのまにか朝を迎えています。手にしているものには気付かずに、失ったものばかり心配しながら、目の前の物に取り組む日々が続きます。カの限り。

本日はご来場ありがとうございます。今年最後の弦巻楽団です。もし今作を気に入っていただけましたら、ぜひ(今が千秋楽じゃなければ)大切な友人にお薦めしてください。とりあえず、今は客席でゆっくり、あなたが深呼吸できて、ちょっぴり笑ってもらえたら、これ以上のことはありません。そしてよければ、来年も弦巻楽団の挑戦にお付き合いください。そう!来年も結構な挑戦が続きます。一緒にワクワク(びくびくもしてるけど・・・)しましょう!!

#8『子供のように話したい』、間もなく開演です。ごゆっくり、お楽しみください。

弦巻啓太(当日パンフレットより)