2009年に札幌・愛知で上演された名作を、3年振りに再演。溢れる笑いと、分かり易さ、唯一無二の馬鹿馬鹿しいまでの超展開、そして人間への温かな目線…と、弦巻楽団の魅力を結晶化したような作品。総勢12名の役者が参加し、4パターンのキャスティングで上演。
20年前、日本中を騒然とさせた“恐るべき子供たち”、超能力を持った小学生アイドル「サイキック5」。ある日を境に、人気絶頂のなか彼らは芸能界を引退。忽然とメディアから姿を消した。
彼らは一般人を装って、大人になっていた。成長した彼らのもとに、一人の記者がやってくる。彼女の登場によって、彼らの忌まわしい記憶の蓋が開かれる…。彼らは、なぜ突如引退し、「サイキック5」を解散させたのか?果たして、記者の目的は?彼らは本当に“恐るべき子供たち”だったのか?!
出演
森田亜樹
楽太郎
大沼理子
橋本久美子(セブンスロバ)
小野優(LAUGH LAMP)
町田誠也
須山美鈴
斉藤詩帆
トマト(教文13丁目笑劇一座)
吉原大貴(演劇ユニットブレブレイン)
能登屋南奈(劇団パーソンズ)
工藤舞子(劇団パーソンズ)
日程
2012年5月8日(火)〜14日(月)
全17ステージ
会場
扇谷記念スタジオ・シアターZOO
スタッフ
作・演出:弦巻啓太
照明:樋口優里
音響操作:清野草太
衣裳:斎藤もと(TUC)
制作:弦巻楽団
本日は弦巻楽団#16 1/2『神の子供達はみな遊ぶ』にお越しいただき、誠にありがとうございます。
今作のモチーフは「超能力」です。僕の子供の時、超能カブームというのがありました。ユリ・ゲラーに心を掴まれた僕は、スプーンを何本も力で無理矢理曲げては母に叱られ、テレビの前に時計を置いては「一瞬秒針が止まった!」と大騒ぎする子供でした。
昨年は4度の本公演を行いました。それも劇場も3ヶ所で、作品も代表作 『死にたいヤツら』の再演(#13)や11年前の脚本を甦らせた 『ラブレス』(#15)、新作も 『スウィート・ソウル』(#14)と 『テンプテイション』(#16)と趣向の違う作品と、充実した冒険?をさせて貰いました。正直、団員のいない劇団としては、体力の限界へ挑み続けたような一年でした。
前回公演の翌々日、弦巻は1人東京へ旅立ち、一ヶ月見知らぬ人々と共同生活(シェアハウス)を営みながら、役者として舞台に客演してきました。慣れない環境……他人(しかも芝居とは全く関係ない人達!)との気をつかった生活……満員電車……厳しい稽古(泣)……18ステージという長丁場……
正直、超楽しかった!!!!!!!!!!!!!
正直、一度も寂しいと思わなかった!!!!!!!!!!!!!
もともと、見知らぬ人の中に飛び込むのは抵抗ないのです。
その東京で、中学生時代の、弦巻の人生において数少ない親友と断言できる高原君と再会しました。お互いに与えた影響が計り知れない彼との約15年ぶりの再会はもちろん、とても楽しいものでした。その彼が下北沢の焼き肉屋でふいに言いました。
「弦巻は孤独だからね。」
ええええええええ?!?!?!
おい!!親友!!
…でも、彼の意味するところは、実は、充分に分かっていました。昔から、「仲間」を作ることが苦手です。苦手どころか、抵抗さえあります。誰かと協力することに後ろめたささえ感じます。1人でいる方が、堂々と孤独でいる方がずっっっっっっと落ち着きます。なので、環境が変わることに抵抗はありません。執着も無い。逆に、自分が「共同体」の一部であることに(或は、頭領であることに)居心地の悪さを感じます。全くもって、劇団向きの気質ではありません。
何故後ろめたいのか?なぜ居心心地が悪いのか?それは言葉にすると、
「ヒリヒリした孤独を抱えたお客さんの前で、仲間内でぬくぬくと守られた舞台は上演したくない」ということです。弦巻楽団の公演はどんなジャンルの作品を上演しようと、そこだけは譲ってこなかったつもりです。
さてそんな弦巻楽団ですが、新入団員が2名入団しました。てへ!「仲間」とはまた違った劇団のあり方について、今はボンヤリですが、構想を抱いてます。今回の公演は、その来るべき「新たな弦巻楽団」の作品へ向けた実践(のための言わば調査実験)、第1弾です。この「たった5人のエンターテイメント」と言うべき作品に、ベテラン若手問わず12名のキャストを招集しました。同じ脚本を4チームの組み合わせで演じます。またまた体力の限界への挑戦です。競い合い、比べ合い、それぞれのチームの可能性を絞り尽くす稽古が続きました。正直、こんな楽しいことはありません。演劇の可能性(或は、有限性)について、考えさせられます。
ときどき、稽古場で「認めて貰いたい」眼差しを感じることが有ります。人によって形は違いますが「褒めて欲しい」もあれば「叱って欲しい」もあります。人によっては「激しく罵声を浴びせて欲しい」というオーラを出してる人もいます。弦巻は、その眼差しにはあえて応じません。まあ、舞台に上がってみるしかないよね、と心の中で(時には声に出して)呟きます。その返事をくれるのは、お客さんという残酷なくらい平等な人達だけなんだから、と。
何度目かの新しい出発です。
この作品は3年前に上演されました。愛知へ連れて行ってくれたり、高校生が上演してくれたりと、弦巻楽団を様々な場所へ導いてくれた作品です。ひょっとすると、そんな「超能力」が、この作品自体に宿っているのかもしれません。もし、千秋楽まで日があって、余裕がございましたら他のチームもご覧下さい!見比べて、ぜひその感想をお聞かせ下さい!我々がこの公演自体を楽しんでるように、見比べ品評すること自体を楽しんでもらえたら、と思います(実行するのはなかなか大変でしょうが…)。
ごゆっくり、お楽しみ下さい。では。
弦巻啓太(当日パンフレットより)